材料開発をデータ駆動型アプローチで加速。
ベイズ最適化による逆問題解析モデルで、実験回数を半減

  • 公開日 2025-09-11
  • 最終更新日 2025-09-11

お客様情報

  • 企業:材料メーカー
  • 職種:製造
  • 業務:特定波長吸収素材の開発

素材・化学メーカーの研究開発部門において、「有望な新材料を見つけたいが、実験の回数が多すぎて開発に時間がかかりすぎる」「開発ノウハウが特定の研究者の勘と経験に頼っており、なかなか若手に引き継げない」といった課題にお悩みの方は多いのではないでしょうか。無限に近い組み合わせの中から最適な答えを見つけ出す材料開発は、まさに試行錯誤の連続です。

しかし、もしAIが過去の実験データを学習し、「次に試すべき最も有望な実験条件」を提案してくれるとしたら、開発プロセスは劇的に変わるはずです。

今回ご紹介するのは、Aidemy Solutionsが材料メーカー様と共に実現した、MI(マテリアルズ・インフォマティクス、機械学習などを活用し、材料開発の効率化を図る取り組み)を活用した開発スピード向上のプロジェクトです。AIの一種であるベイズ最適化という手法を用い、いかにして実験回数を半分に削減する道筋をつけたのか、その詳細をご覧ください。

図:実験回数が多く材料開発に時間がかかる課題に対し、逆問題解析モデル(ベイズ最適化)を活用して予測精度を向上させた事例を示した。実験回数の削減とデータの可視化により、知見者以外の議論参加も促進される効果を解説している。

導入前の課題「開発の属人化とスピード不足」

今回ご支援した材料メーカー様は、特定波長吸収素材の開発において、以下のような課題に直面していました。

  • 実験回数が多く、開発のスピード感が足りない
  • 開発ノウハウが一部の知見を持つ担当者に限られてしまう

これらの課題を解決し、材料開発のスピードを上げることを目標に、データ駆動型のアプローチを取り入れた本プロジェクトがスタートしました。

プロジェクトは「結果予測モデル開発」と「実験条件予測モデル開発」の2段階で

プロジェクトは「どのような条件で実験すれば、望む結果が得られるか?」という問いにAIが答えられるようにするため、「結果予測モデル開発(順問題解析)」と「実験条件予測モデル開発(逆問題解析)」の2つのフェーズを3か月に分けて進行しました。

プロジェクトメンバーは、お客様からはプロジェクトマネージャー、DX担当者、事業部担当者、Aidemy Solutionsからはプロジェクトマネージャー、データサイエンティストが参画しました。

図:結果予測モデル開発(フェーズ1)と、実験条件予測モデル開発(フェーズ2)の2段階プロセスを示した。各フェーズは3か月で進行し、週次定例会で進捗報告が行われることを示している。

フェーズ1「結果予測モデル開発(順問題解析)」
実験条件から最適な実験結果を予測する

最初の3か月は、実験条件から実験結果を予測する「順問題解析モデル」を開発しました 。

これは、過去の実験データをAIに学習させ、「この条件で実験したら、このような結果になるだろう」と予測できるようにするものです。このモデル開発の過程で、実験データや変数同士の関係性をグラフなどで可視化しました。

これにより、これまでベテラン研究者の頭の中にしかなかった知見がチーム全体で共有され、知見者以外も積極的に議論に参加できるようになりました。

図:色情報や特定波長の分布を可視化したグラフを通じて、実験条件や結果の関係性を把握しやすくする事例を示した。チーム全体の共通理解力を向上させる効果を説明している。

フェーズ2「実験条件予測モデル開発(逆問題解析)」
実験結果から最適な実験条件を予測する

次の3か月は、本プロジェクトの核となる実験結果から実験条件を予測する「逆問題解析モデル」の開発です。

フェーズ1のモデルとは逆に、「こんな性能を持つ素材が欲しい」というゴール(結果)を設定すると、そのために最も有望な実験条件をAIが推薦(予測)してくれるモデルです。このモデルにはベイズ最適化という手法が採用されており、少ない実験回数で効率的に最適な条件を見つけ出すことを可能にします。

図:ベイズ最適化による逆問題解析モデルを用いた波長予測と、実験条件の可視化によって、実験回数を削減する仕組みを示した。既存データとの比較で新規条件を評価し、実験設計の効率化を図っている。

まとめ「実験回数の半減と開発体制の強化」

今回のプロジェクトで導入した「データ駆動型アプローチ」によって、大きな成果が期待されます。

開発したモデルを過去の実験データで評価したところ、実験回数を半分に削減できるシミュレーション結果が得られました。これにより、開発期間の大幅な短縮とコスト削減が見込めます。

また、データ可視化によってチームの共通理解が深まったことで、開発業務の属人化が解消され、組織全体としての開発力強化にもつながります。

本事例は、AI(ベイズ最適化)を活用することで、材料開発における最大の課題である「膨大な実験回数」を削減し、開発プロセスそのものをより速く、より効率的に変革できることを示しています。

「新材料の開発スピードを上げたい」「ベテランのノウハウを組織の力にしたい」といった課題をお持ちの研究開発部門の方は、ぜひAidemy Solutionsにご相談ください。データ駆動型アプローチで、貴社の材料開発を新たなステージへと加速させます。

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