3Dプリント粉体の形状分類割合の算出と品質改善への活用。
因果分析によって経験則依存を脱却、AIで可視化・定量化

  • 公開日 2025-09-11
  • 最終更新日 2025-09-11

お客様情報

  • 企業:金属材料メーカー
  • 職種:R&D部門
  • 業務:品質評価

R&D部門にとって、「製品の品質に何が影響しているのか、原因は分かっているが、勘や経験則の域を出ない」「品質改善の具体的な指針を、製造現場に定量的に示すことができない」など、複雑な因子が絡み合う製品の品質をコントロールすることは大きな課題です。

特に、3Dプリンターに使われる金属粉体のような材料では、粉ひとつひとつの「形状」が最終製品の品質を大きく左右しますが、その関係性を明確に捉えることは容易ではありませんでした。

今回ご紹介するのは、Aidemy Solutionsが金属材料メーカー様と実現した、AIによる因果分析プロジェクトです。これまで有識者の経験則に依存していた品質評価を、AIでいかに可視化・定量化し、製造現場が使える品質改善の指針へと繋げたのか。その具体的なプロセスをご覧ください。

図:3Dプリンタ用金属粉体の形状分類モデルを構築し、形状・サイズなどの因子を可視化・定量化することで、品質要因を特定しやすくした事例。因果関係の見える化により、製造現場での改善指針の提示を支援している。

導入前の課題「品質への影響を特定できず、改善につながらない」

3Dプリンター用の金属粉体の品質評価を行うこのメーカーのR&D部門では、以下の課題を抱えていました。

  • 因果関係の可視化と定量化が不十分
    原因と結果の関係(因果関係)が可視化・定量化されておらず、製造現場へ具体的な改善指針を提示できない
  • 粉体の品質影響を適切に特定できない
    3Dプリント粉体の品質に何が影響しているかを適切に特定できない

この状況を打開するため、「3Dプリンタ金属粉体形状の情報を可視化し、品質管理に活用する」いう目標のもと、本プロジェクトがスタートしました。

プロジェクトは「画像分類モデル開発」と、「因果分析・品質シミュレーター開発」の2段階で

プロジェクトは、複雑な粉体の形状をデータ化し、品質との関係性を解明するため、「画像分類モデル開発」と「因果分析・品質シミュレーター開発」の2つのフェーズを3か月に分けて進行しました。

プロジェクトメンバーは、お客様からはプロジェクトマネージャー、DX担当者、事業部担当者、Aidemy Solutionsからはプロジェクトマネージャー、データサイエンティストが参画しました。

図:画像分類モデルの開発(フェーズ1:3ヶ月)と、因果分析・品質シミュレーターの開発(フェーズ2:3ヶ月)の工程を示した。各フェーズの進捗は週次定例会で報告される体制を表している。

フェーズ1「画像分類モデル開発」
AIの「眼」で粉体の形状を分類・データ化

最初の3か月は、3Dプリント金属粉体の電子顕微鏡写真から、AIが自動で形状を分類し、その割合を算出するために、LightGBMによる画像分類モデルを開発しました。

これにより、これまで人の目で見て判断していた「丸い粒子が多い」「いびつな粒子が混ざっている」といった曖昧な情報を、「形状Aが60%」「形状Bが30%」というように、客観的な数値データとして活用できるようになりました。

図:画像分類モデルを用いて、3Dプリンタ用金属粉体の形状を分類し、分類割合を可視化している。粉体全体を複数の代表的な形状(A〜E)に分類し、それぞれの形状の割合を数値で示すことで、粉体の性状把握や品質管理に活用できることを表している。

フェーズ2「因果分析・品質シミュレーター開発」
因果ダイアグラムで品質への影響を解明し、可視化・定量化

次の3か月は、本プロジェクトの核心である因果分析と品質シミュレーターの開発です。

フェーズ1で得られた形状分類データに加え、大きさや周囲長など、品質に影響を与えうる数十の因子をAIで分析。それぞれの因子が品質にどれくらい、どのように影響しているのかを関係図(因果ダイアグラム)で可視化し、影響度を数値で定量化しました。

さらに、「この形状の粉体の割合を増やしたら、品質はどう変化するか」といったシミュレーションを行える品質シミュレーターも開発。これにより、製造現場は具体的な改善アクションを進めやすくなりました

図:因果関係をダイアグラム形式で可視化し、品質への影響を定量評価する仕組みと、その結果を活用して製造現場でシミュレーションを行っている様子を表した。因子の変動による品質指標の変化を予測し、改善活動に役立てていることがわかる。

まとめ「経験則からの脱却と、製造現場で使える改善指針の実現」

本プロジェクトによって、お客様の品質評価業務は大きく変わりました。

  • 有識者の経験則に依存していた作業を可視化・定量化し、誰でも要因分析ができるようになった
  • 開発した品質シミュレーターが製造部門で活用され、具体的な品質改善につながっている

本事例は、AIによる画像分類と因果分析を組み合わせることで、これまでブラックボックスになりがちだった「品質と要因の関係性」を科学的に解明できることを示しています。データに基づいた改善サイクルを回すことで、R&D部門は製造現場と連携し、よりスピーディかつ効果的な品質向上を実現できます。

「製品品質のばらつきの原因が特定できない」「ベテランの知見をデータとして継承したい」といった課題をお持ちでしたら、ぜひAidemy Solutionsにご相談ください。貴社の品質改善をデータとAIの力でご支援します。

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